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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第35章 【第三十話】紅い雪の降る海



ティファは小さく息を吐く。

そして、そっと手を伸ばした。


手すりの上で強張っているラビの手へ、指先で触れる。

ラビが目を見開いた。


「……ティファ?」

「貴方は誰よりも優しいから」

その言葉に、ラビの表情が僅かに歪んだ。

ティファは、触れた指先に少しだけ力を込める。


「その優しさまで、間違いだったことにしないで」

ラビが息を呑む。


「ブックマンとしてどうあるべきか、私には分からない」

静かな声だった。


「でも、誰かを想って苦しくなるラビを、私は間違っているとは思わない」

波音が、二人の間を通り過ぎる。


「その心に、救われた人がいるもの」

ティファはゆっくりラビを見る。


「私も、その一人よ」

ラビは何も言わなかった。


けれど、手すりを握っていた指先から、ほんの少しだけ力が抜ける。

ティファは、その手に触れたまま続けた。


「だから、ラビ自身がその心を責めるなら、私が何度でも言うわ」

まっすぐに、彼を見る。


「その優しさごと、私はラビを好きになったの」

ラビは何も言えなかった。


ただ、顔を伏せる。

潮風に紛れるように、小さく息を吐いた。


「……それ、今言う?」
「今だから言うの」

ラビは深く息を吐いた。


けれど、その肩から少しだけ力が抜けていた。


「……ほんと、お前ってさ」

困ったような、泣きそうな。


けれど少しだけ救われたような声だった。

ティファはラビの手に触れたまま、何も言わなかった。



しばらくして。

ラビが、誤魔化すように笑うのをやめた。

そして、海を見つめたまま呟く。


「……ありがとな」

それは、いつもの軽口ではなかった。
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