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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第35章 【第三十話】紅い雪の降る海



その時だった。

背後で、扉が静かに開く音がした。

ラビは振り返らなかった。

潮風だけが、静かに吹き抜ける。

背後の気配は、ゆっくり隣へ並ぶ。


「……やっぱり、ここにいた」

ティファだった。

ラビは小さく息を吐く。


「何、もう食い終わったん?」
「ええ。リナリーも少しは食べられたわ」

「そっか」

短く返して、ラビはまた海へ視線を戻す。

ティファは少しだけ黙ったあと、静かに続けた。


「……ラビの姿が見えなかったから」

その言葉に、ラビは一瞬だけ黙った。

それから、わざと軽く笑う。


「探しに来てくれたん?」

「そうよ」

あまりに真っ直ぐな返事だった。

ラビは困ったように笑って、視線を逸らす。

ティファは隣へ並び、海を見る。

夕暮れの海は、どこまでも静かだった。

その静けさが、かえって胸を締め付ける。


数秒。

誰も喋らなかった。

やがて、ラビがぽつりと呟く。


「……オレさ」

低い声だった。


「向いてねぇんだろうな」

ティファは眉を寄せる。


「何が?」

ラビはすぐには答えなかった。

代わりに、海を見たまま笑う。


「ブックマン」

空気が、少し変わった。


「本来なら、もっと切り捨てなきゃいけねぇのに」

静かな声。


「アレンが消えた時も、リナリーが泣いてる時も」

手すりの上で、拳がゆっくり握られる。


「……頭ん中、ぐちゃぐちゃだった」

ティファは何も言わなかった。


潮風が、赤い髪を揺らした。

ティファは静かにラビを見る。


いつも軽く笑っている人。

掴みどころがなくて。
飄々としていて。

どんな場面でも、冗談みたいに空気を揺らす人。


けれど今は。

少しだけ、迷子みたいな顔をしていた。
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