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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第35章 【第三十話】紅い雪の降る海



その瞬間、リナリーの瞳が少し揺れた。

そして。


「……ありがと」

小さく笑う。


今度の笑顔は、ちゃんと温かかった。

ラビも、それを見て少しだけ肩の力を抜く。

その空気を眺めながら、ティファは静かに息を吐いた。


よかった。
まだ皆、壊れていない。

その時だった。

ぐぅぅぅ……。

妙に大きな音が部屋へ響いた。


沈黙。

全員の視線が、一斉にクロウリーへ向く。


「……お腹が空いたである」

真顔だった。


数秒後。

リナリーが吹き出した。


「ふふっ……!」

クロウリーが慌てる。


「わ、笑うところではない!」
「いや、最高のタイミングだったわ、今の」

ティファも思わず笑ってしまう。

ラビは壁に片手をついて肩を震わせていた。


「クロちゃん、空気読めなさ過ぎだろ……!」
「だ、だって本当に空いたのである!」

ミランダまでおろおろし始める。


「ご、ご飯にしますか!?」
「元気ねぇ……」

アニタが呆れたように、けれど楽しそうに笑った。

その時。

ラビがふとティファの横へ来る。


「?」

小さく屈む。

そして。


「……元気戻してくれて、ありがとな」

耳元で、低く囁いた。

心臓が跳ねる。

ティファは思わず振り返る。


けれどラビは、もう離れていた。

何事もなかったみたいな顔で。


「ほら、飯行くぞー」

クロウリーの肩を叩きながら、先に部屋を出ていく。


「待つのである!」

賑やかな足音が遠ざかっていく。

ティファはしばらく動けなかった。

耳だけが熱い。

その横で。

アニタがにやにやしている。


「青春ねぇ」
「……やめてください」

リナリーがまた小さく笑った。
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