第34章 【第二十九話】白光の行方
「感情に呑まれるな、49番目」
低い声。
「お前は、ブックマンじゃ」
その瞬間。
ラビの表情が、僅かに歪んだ。
悔しそうに。
苦しそうに。
でも、否定出来ない顔だった。
数秒後。
ブックマンはようやく耳を離す。
「いってぇ……」
ラビが耳を押さえながら睨む。
けれどブックマンは、何事もなかったように視線を逸らした。
その横顔を見ながら、ティファは静かに息を吐く。
多分。
今のラビは、誰より自分自身へ腹を立てている。
その瞬間。
バンッ!!
勢いよく扉が開いた。
「何事です?」
アニタだった。
その後ろにはマホジャもいる。
二人とも、割れた窓を見て目を見開いた。
潮風が船内へ吹き込んでいる。
数秒。
沈黙。
そして。
「「「こいつです」」」
全員が、一斉にラビを指差した。
「お前らぁ!?」
ラビが絶叫する。
けれど遅い。
マホジャのこめかみに青筋が浮いた。
「いや、これには深い事情が――」
ぐいっ!!
次の瞬間、マホジャがラビの胸ぐらを掴み上げた。
「ぐえっ!?」
完全に浮いている。
「直ったばかりなんだが?」
笑っていない。
ラビが本気で焦り始める。
「す、すんませんでした!!」
「反省しているように聞こえないな?」
「してる!! 超してる!!」
クロウリーが怯え、ティファは思わず顔を覆った。
その時だった。
カチ、カチ、カチ――。
タイムレコードが光を放つ。
砕け散っていた硝子が、時間を巻き戻すみたいに宙へ浮かび上がった。
ぱき、ぱき、と音を立てながら元の位置へ戻っていく。
数秒後。
割れていた窓は、何事もなかったみたいに元通りになっていた。
沈黙。
マホジャがゆっくり窓を見る。
そして、ラビを見る。
「……今回は見逃してやる」
「ありがとうございます!!」
即答だった。
その勢いに、クロウリーが小さく吹き出す。