第34章 【第二十九話】白光の行方
ティファも思わず、小さく笑ってしまった。
リナリーも。
ほんの少しだけ。
本当に少しだけ、張り詰めていた肩の力を抜いたように見えた。
けれど、リナリーはまだ俯いたままだった。
ティファはその姿を見つめ、小さく息を吸う。
不安は消えない。
怖い。
それでも。
このままでは、リナリーが壊れてしまう。
ティファはゆっくり口を開いた。
「……ミランダ」
突然名を呼ばれ、ミランダがびくっと肩を跳ねさせる。
「えっ?」
「団服を持ってきてくれたのよね?」
「あ、はい。こちらです」
ミランダは慌てながらも、抱えていた箱を差し出した。
「本部で急いで調整したものです……!」
ティファはその箱を受け取ると、リナリーへ差し出した。
「リナリー」
リナリーがゆっくり顔を上げる。
ティファは無理に笑わなかった。
ただ、静かに手を差し出す。
「着替えに行きましょう」
「……ティファ」
「アレンに会えた時、ちゃんと顔を上げられるように」
リナリーの瞳が、微かに揺れる。
ティファはその手を差し出したまま、静かに続けた。
「私達、まだ終わっていないもの」
沈黙が落ちた。
その時、ブックマンが静かに口を開いた。
「……アレン・ウォーカーは、ヘブラスカに“時の破壊者”と告げられた男じゃ」
リナリーが、ゆっくり顔を上げる。
ブックマンは目を細めたまま、低く続けた。
「保証はせん。じゃが、ワシにはあれが、ここで終わる人間には見えんかった」
波音だけが、しばらく船室に響いた。
絶望だけで満ちていた空気の中に、ほんの僅かな希望が灯る。
しばらくして。
リナリーの指が、そっとティファの手へ触れた。
その細い手を、ティファはしっかり握った。
クロウリーが、ほっとしたように息を吐く。
ミランダも胸元に手を当て、少しだけ安心したように表情を緩めていた。
その後ろで。
ラビが、少しだけ目を細める。
まるで。
少しだけ、救われたみたいに見えた。