第34章 【第二十九話】白光の行方
そして、映像の中で途切れた白い光。
誰も、動けなかった。
誰も、声を上げられなかった。
潮風だけが、傷付いた船の上を通り過ぎていく。
ティファはリナリーの手を握ったまま、俯いた。
喉の奥で、ニルヴァーナがまだ小さく震えている。
それが痛みなのか、悲しみなのか。
それとも、消えかけた何かを探しているのか。
ティファには、分からなかった。
ただ。
アレンの名を呼ぶことさえ、今は怖かった。
重苦しい空気を抱えたまま、船は最寄りの舟付け場へと停泊した。
空は赤黒く染まり始めている。
誰も喋らなかった。
リナリーは俯いたまま、ずっと拳を握り締めている。
その時だった。
「――アジア支部より参りました」
岸から声が飛ぶ。
全員が顔を上げた。
そこに立っていたのは、大柄な男だった。
アジア支部の使い、ウォン。
彼は船着き場へ来るなり、淡々と頭を下げた。
「アレン・ウォーカーについて、アジア支部が対応しております」
どくん。
リナリーが弾かれたように顔を上げる。
「アレン君は!?無事なんですか!?」
切羽詰まった声だった。
けれどウォンは、一瞬だけ沈黙したあと、視線を伏せた。
「アレン・ウォーカーとは、ここでお別れです」
その言葉が落ちた瞬間。
胸の奥で、ニルヴァーナが嫌な音を立てた。
ティファは思わず胸元を押さえる。
嫌だ。
その言い方は嫌だ。
「……待って」
掠れた声が漏れた。
ウォンがこちらを見る。
ティファは唇を噛み締める。
聞かなければならない。
けれど。
答えを聞くのが怖い。
「……アレンは」
喉が震えた。
「アレンは、無事なんですよね……?」
静かな声。
けれど最後だけ、少し掠れた。
ウォンは答えない。
その沈黙だけで、心臓が冷えていく。
「答えてください」
思わず一歩前へ出る。
「……生きているなら、そう言って」