第34章 【第二十九話】白光の行方
胸の奥に重たい不安が沈んだ、その時だった。
ギィィィィィ――ッ!!
耳障りな機械音が、海上へ響き渡った。
空気が、一瞬で変わる。
「何だ、今の音は!」
「上だ!」
船員の叫びに、ティファは反射的に空を見上げた。
朝靄の向こう。
白く霞む空を、黒い影が横切っていく。
一体ではない。
無数のAKUMAが、黒い群れとなって海上を飛んでいた。
軋むような羽音。
耳障りな機械音。
その異様な光景に、甲板がざわめく。
「総員、武器を持て!」
マホジャの声が響いた。
アニタも即座に叫ぶ。
「迎撃準備!」
船員達が慌ただしく動き出す。
ティファは二振りのレイピアを顕現させた。
ラビが大槌小槌を構え、アレンも左腕へ力を込める。
リナリーは甲板を蹴れる姿勢を取っていた。
けれど、AKUMA達は船を狙ってはいなかった。
群れは船の上空を掠めるように通り過ぎ、そのまま海の向こうへ向かっていく。
もっと先へ。
何かに引き寄せられるように。
その瞬間だった。
上空を通過していた一体のAKUMAが、不意に動きを止めた。
ぎょろり、とこちらを見下ろす。
嫌な予感が、背筋を走った。
「――あれぇ?」
不気味な声が、空から落ちてくる。
「やっぱり、エクソシストじゃん」
次の瞬間。
そのAKUMAが、弾丸のような速度で急降下してきた。
「アレン!」
ティファが叫ぶより早く、AKUMAの鉤爪がアレンの身体を掴み上げた。
「っ……!」
「アレン君!」
リナリーの悲鳴が響く。
ラビが舌打ちし、大槌小槌を構え直した。
だが、AKUMAは甲高く笑いながら、一気に上空へ舞い上がる。
「見つけた、見つけた! エクソシストだ!」
「アレン!」
ティファは反射的に踏み出した。
喉の奥で、ニルヴァーナが熱を帯びる。
けれど、別のAKUMAが甲板へ急降下してきた。
衝撃で木材が砕け、船員達が悲鳴を上げる。