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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第34章 【第二十九話】白光の行方



「やめてちょうだい。船を壊されたら困るわ」

アレンも静かに間へ入る。


「出航前から揉めるのはやめましょう」

慣れた仲裁の声だった。

マホジャはそんなアレンを見て、少しだけ目を細める。


「あんたが一番苦労してそうだな」
「……否定はしません」

その返答に、アニタがまた笑う。


「本当に面白い方達ね」

朝靄の向こうから、潮の匂いを含んだ風が吹き込んでくる。

アニタは港の方へ視線を向けた。


「行きましょう。船員達が待っているわ」

一行は離れを出た。
人目を避けるように裏路地を抜け、水路沿いを進む。

やがて視界が開けた。


港だった。

朝靄の中、大型の帆船が静かに停泊している。

軋む木材の音。
忙しなく動く船員達。
白く霞む海。

そのすべてが、これから向かう場所の遠さを否応なく思い知らせた。


「この船で江戸へ向かいます」

アニタが告げる。

朝の港へ、潮風が吹き抜ける。

その先にある海は、まだ白い靄に覆われていた。

江戸へ。
クロスの元へ。

一行は、アニタの船へと足を踏み入れた。


甲板では、船員達がすでに出航の準備を進めている。

アニタが彼らを黒の教団のエクソシストだと紹介すると、アレン達は簡単に挨拶を済ませた。

船員達は短く頷き、すぐに持ち場へ戻っていく。


縄が引かれ、帆が上がる。

木材の軋む音と共に、船体がゆっくりと動き出した。

港が、少しずつ遠ざかっていく。

朝靄の向こうで、花街の灯りが淡く滲み、やがて白い霞の中へ溶けていった。


しばらくの間、甲板には潮風と波音だけが満ちていた。

アニタは船首近くに立ち、海の先を見据えている。

その横ではマホジャが腕を組み、周囲へ鋭い目を配っていた。

ブックマンは無言で空と海を眺めている。

ラビは手すりに背を預けていたが、その片方だけ覗く翠の瞳は油断なく空を見ていた。

ティファもまた、海の先へ視線を向ける。


本当に師匠はいるのだろうか。
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