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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第34章 【第二十九話】白光の行方



「なら支度せい」
「へいへい」

軽く返しながらも、ラビの耳元にはまだ熱が残っていた。

背後の部屋を一度だけ振り返る。

扉の向こうには、ティファがいる。

それだけで、昨夜までとは何かが変わってしまった気がした。


守りたい、だけではない。

これから先も、彼女の隣にいることを選びたい。


そう思ってしまった自分を、もう誤魔化せなかった。

ラビはその感情を胸の奥へ沈め、自分の部屋へ戻っていった。




夜が明けきる前に、一行は離れの小さな客間へ集まっていた。

表の花街はまだ眠りの底に沈んでいる。

用意された携帯用の朝食は、竹皮に包まれた饅頭と、硬いパン、それから干し肉だった。

誰も多くは話さない。

明け方には船が出る。

江戸へ。
クロスの行方を追って。


短い食事を終えた頃、襖の向こうから低い足音が近付いてきた。


「お待たせしました」

姿を見せたのは、マホジャだった。

その後ろから、艶やかな声が続く。


「船が出ますよ、エクソシストの皆さん」

現れたアニタを見て、ティファは思わず目を見開いた。


昨夜の花街の女主人とは、まるで別人だった。

深紅を基調とした動きやすい衣。
袖は絞られ、帯には短刀が差してある。

黒髪は飾り気なく整えられ、昨夜の艶やかさよりも、今は凛とした鋭さの方が際立っていた。

その姿は、花街の女主人というより、海を渡る女頭領に近い。


「……アニタさんも来るんですか?」
「ええ。クロス様を追うのでしょう? なら、私が案内した方が早いわ」

「でも、危険です」

アレンが静かに言う。

アニタは初めて彼へ視線を向けた。


「貴方が、アレン・ウォーカー君ね」
「はい。クロス元帥の弟子です」

「話は少しだけ聞いているわ。あの人の弟子にしては、随分礼儀正しいのね」

「……師匠を基準にされると困ります」

アレンが苦笑すると、アニタは小さく笑った。

リナリーも一歩前へ出る。
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