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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第34章 【第二十九話】白光の行方



やがて、小さく息を吐く。


「……このまま逃げる?」
「え?」

「船乗らずにさ」

低い声。

冗談みたいな言い方だった。


けれど、その奥にほんの僅か、願いのようなものが滲んだ気がした。


ティファは小さく笑う。


「師匠が怒るわ」
「げ、確かに」

ラビが顔を顰める。


「“弟子のくせに根性ねぇな”とか言いそう」

思わず、ティファは小さく吹き出した。

その笑い声を聞きながら、ラビがゆっくりこちらを見る。

片方だけ覗く翠の瞳が、柔らかい。


「……そういう顔してろよ、ずっと」

低い声だった。

胸が熱くなる。

ティファが少し照れ臭くなって視線を逸らすと、ラビの指先が、そっと顎を掬った。


「こっち見て」

低く、甘い声だった。

逆らえずに視線を戻した瞬間、ゆっくり唇が重なる。

短い口付け。


けれど、離れ際にもう一度触れてくるところが、少しだけずるかった。


「……ラビ」
「何」

「名残惜しそう」

「そりゃあな」

即答だった。

ティファが思わず笑うと、ラビは彼女の髪へ頬を寄せるように抱き寄せた。


「でも、行くさ」

低い声。

「クロス元帥を見つけて、江戸を乗り越えて――その後も、ちゃんとお前の隣にいるから」

その言葉に、胸の奥が静かに熱を帯びた。


未来。

ラビが、未来の話をしている。

ブックマンとしてではなく。

ひとりの男として。


ティファはそっと、ラビの手を握った。


「……うん」

静かな返事。


けれど、それだけで十分だった。

ラビはその手を握り返し、もう一度だけティファの額へ唇を落とす。


「寝ようぜ。……明け方には、また忙しくなる」
「ラビは、自分の部屋に戻らないと」
「えー、戻るのめんどい」

「ラビ」

「大丈夫だって。早めに起きて、こっそり戻るさ」

呆れたように見上げると、ラビは悪戯っぽく笑って、ティファを布団の奥へ引き寄せた。

「今日はここで一緒に寝る」
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