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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第34章 【第二十九話】白光の行方



息が止まりそうになった。

その熱を受け止め切れなくて、ティファは思わずラビの胸元へ顔を埋める。


沈黙が落ちた。

嫌な沈黙ではなかった。


ただ、お互いの鼓動だけを聞いているような、静かな時間だった。

その時だった。


「……ティファ」

ラビが不意に、ティファの髪を撫でながら呟く。


「もしオレが、ブックマンじゃなかったら」

胸の奥が、強く跳ねた。


「こんなふうに幸せだって思うたびに、怖ぇってならずに済んだんかな」

その声が、あまりにも静かで。

ティファはゆっくり身体を起こし、ラビを見る。

彼は笑っていた。


けれど、片方だけ覗く翠の瞳の奥には、消えない孤独があった。

ティファはそっと手を伸ばし、その頬へ触れる。


「……怖くなってもいい」
「それでも私は、ラビの傍にいる」

ラビの瞳が、僅かに揺れる。


「ラビが怖くなるたびに、何度でも言うわ。私は、ラビの傍にいるって」

指先で、彼の頬へそっと触れる。

その瞬間。

ラビの表情が、ほんの少し崩れた。

堪えていたものが、溢れそうになるみたいに。

次の瞬間には、強く抱き締められていた。


「……ほんと、お前ずりぃ」

掠れた声。

肩口へ顔を埋めるラビの呼吸が、少しだけ震えている。


ティファはそっと、その赤髪を撫でた。

窓の外では、雨上がりの水路が静かに光を揺らしている。

明ければ、また戦いが始まる。

海へ出て。
江戸へ向かって。

もっと過酷な運命へ踏み込んでいく。


けれど今だけは。

その全てを忘れるみたいに、ティファはラビの温もりへ静かに身を預けていた。


「……明け方には、行かなきゃね」

その言葉を口にした瞬間、胸の奥が少しだけ冷えた。

江戸。
クロス元帥。
AKUMA。

そして、これから始まるもっと危険な戦い。

現実がゆっくり戻ってくる。


ラビはしばらく黙ったまま、ティファの髪を撫でていた。
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