第32章 【第二十八話】赤い紐の先
「今夜は、裏手の離れを使いなさい。貴女達がここへ来たことは、表には一切出さない。明け方、船着き場へ案内させるわ」
それから、ほんの少しだけ目元を和らげた。
「それと、外で待っている坊やにも、早く無事な顔を見せてあげなさい」
「……え?」
「さっきから裏路地の空気が殺気立っていて、用心棒達が落ち着かないのよ」
思わず目を瞬かせる。
「……ラビが?」
アニタは煙管を持ち直し、くすりと笑った。
「随分、大切にされているのね」
頬が、僅かに熱くなった。
ティファは誤魔化すように頭を下げる。
「……ありがとうございました」
「気をつけなさい」
アニタの声が、少しだけ低くなる。
「クロス様の弟子なら、無茶をする癖まで似ていそうだから」
ティファは、一瞬だけ目を伏せた。
「……気をつけます」
そう答えると、アニタはどこか呆れたように笑った。
「その返事が一番信用ならないわね」