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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第32章 【第二十八話】赤い紐の先


支度を終え、座敷へ通された時、空気が僅かに変わったのが分かった。

灯籠の柔らかな明かりが、銀髪へ落ちる。

深い紫色の衣の裾が、歩くたびに銀の光を揺らした。

広い座敷には、数人の男達が酒を酌み交わしている。

彼らの視線が、一斉にこちらへ向けられた。

「ほぉ……」

「随分と珍しい娘が来たな」

「異国の女か?」

肌へ絡み付くような視線に、指先が僅かに冷える。

けれど、顔へは出さなかった。

ティファはマホジャに促されるまま、座敷の中央へ座る。

傍らには、弦の細い楽器が置かれていた。

旅の途中、酒場で歌う時に何度か触れたことのあるものに近い。

ここで使うのは、母の歌ではない。

魂へ触れる歌でも、ニルヴァーナの力へ繋がる旋律でもない。

ただの歌。

かつて旅の途中で覚えた、遠い故郷を想う古い恋歌。

ティファは小さく息を吸い、歌い始めた。

ざわついていた座敷が、少しずつ静かになっていく。

酒杯を掲げていた手が止まる。

笑っていた男の声が途切れる。

灯籠の揺れる明かりの中で、ティファの声だけが、静かに流れていった。

歌い終わった瞬間、短い沈黙が落ちた。

それから、座敷へどよめきが広がる。

「……これは驚いた」

「もう一曲聞かせろ」

「どこの国の歌だ?」

ティファは微笑みを崩さず、静かに頭を下げた。

その時、座敷の奥で煙管の灰が落ちる音がした。
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