• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第32章 【第二十八話】赤い紐の先


背後で、扉が静かに閉じられる。

外の湿った夜気が途切れ、代わりに甘い香が肌へ纏わり付いた。

磨かれた木の床。

灯籠に照らされた朱色の柱。

奥へ幾重にも続く、細い廊下。

表の座敷からは、男達の笑い声と女達の柔らかな声が絶え間なく流れてくる。

マホジャは足音を立てずに歩き出した。

ティファはその背を追う。

いくつかの座敷の前を通り過ぎるたび、障子の向こうから気配が流れてきた。

酒に酔った笑い声。

品定めするような視線。

扇子の隙間から覗く女達の目。

まだ外套を纏っているだけなのに、身体の輪郭を測られているような感覚に、背筋が僅かに強張る。

けれど、顔は伏せなかった。

ここで怯えれば、かえって目立つ。

客間の並ぶ廊下を抜け、人の気配が薄い奥廊下へ入ったところで、マホジャはようやく足を止めた。

「私はマホジャ。アニタ様のお側におります」

低い声だった。

ティファは小さく頭を下げる。

「ティファです。クロス・マリアン元帥の弟子です」

「銀髪の娘が訪ねてくるかもしれない、とだけ聞いていました」

「饅頭屋の店主さんから?」

「それ以上は、まだお話し出来ません」

淡々と遮られる。

拒絶というより、ここで口にすることすら警戒しているようだった。
/ 972ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp