第31章 【第二十七話】黒檀の簪
ブックマンが、卓上の簪を取り上げる。
「なら決まりだ。ティファは裏口から入り、アニタと接触する。ワシらは天青楼の周辺へ散る。異変があれば、店側の事情に構ってはおれん。即座に踏み込む」
「……踏み込む前に、オレが壁ごと壊すかもしれねぇけどな」
ラビがぼそりと呟いた。
軽口の形をしているのに、声は少しも笑っていない。
ティファは思わず小さく息を吐いた。
「壊さないで。アニタさん達まで困るでしょう」
「ティファが無事なら考えるさ」
「考えるだけなのね」
「そこは譲れねぇさ」
ようやく、ラビの口元へ僅かな笑みが戻った。
けれど、その目は最後まで、黒檀の簪から逸れなかった。