第31章 【第二十七話】黒檀の簪
同じ黒の団服を纏い、同じ戦場へ向かっていた者達。
それぞれに仲間がいて、帰るはずの場所があったはずなのに。
もう、戻らない。
「そんな……」
リナリーの声が崩れた。
「どうして……」
アレンがすぐ傍へ寄る。
けれど、何を言えばいいのか分からないように、伸ばしかけた手を一度止めた。
それから、躊躇うように、リナリーの肩へそっと触れる。
「リナリー……」
それ以上の言葉は続かなかった。
ラビは何も言わなかった。
ただ、通信機の前に立ったまま、目を伏せている。
たった一度聞いただけの名前を、一つも零さないように刻みつけているようだった。
ティファは、握り締めた指先へ力を込めた。
昨夜、ティファは魂を送った。
残された少女が、別れの言葉を伝えられるように歌った。
けれど、今失われた百四十八人へは、何も出来ない。
どこで亡くなったのかも分からない。
誰がその最期に立ち会ったのかも分からない。
ティファの歌が届かない場所で、あまりにも多くの命が消えていく。
「……どうして」
リナリーの小さな声が落ちた。
「どうして……こんなに、死ななきゃならないの……」
誰も答えられなかった。
どんな理由を並べても、失われた命が軽くなることなどない。
長い沈黙の中で、ブックマンが静かに手帳を閉じた。
ぱたり、と乾いた音が響く。
「……嘆くなとは言わん。忘れろとも言わん。だが、今ここで足を止めれば、次の死者を増やすだけだ」
リナリーが、涙で濡れた顔を上げる。
「クロス元帥を見つけねばならん。元帥が狙われておるのなら、なおさらな」