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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第30章 【第二十六話】灯籠の湖


「……どうしたんでしょう」

アレンの声が低くなる。

「師匠の気配は、あの湖の方にあるはずなのに……ティムが辿れなくなってる」

「反応が途切れた、ということかの」

ブックマンが細い目を湖へ向ける。

「あるいは、辿らせぬ何かがあるか」

その言葉に、馬車の中の空気が僅かに冷えた。

私は窓の外へ視線を向ける。

山影の向こうに広がる湖は、夕陽を受けて静かに光っていた。

山の底へ、巨大な鏡を埋め込んだような水面。

美しいはずなのに。

その静けさの奥へ、何かが沈んでいるような気がした。

「……元帥は、この町へ来たのかしら」

リナリーが小さく呟く。

「確認するしかありません」

アレンはティムをそっと手の平へ移し、真剣な顔で湖を見つめた。

「ティムがここで反応を失ったなら、師匠はこの辺りにいるはずです」

「いつもの失踪なら、まだ笑えるんだがな」

ブックマンが低い声で呟く。

「今回は、時期が悪い」

その一言で、車内が静まり返った。

師匠が、自分の意思で姿を晦ませているだけならいい。

どこかで酒を飲み、誰かに借金を押し付けながら、相変わらず勝手に生きているのなら。

けれど、もし。

イェガー元帥を襲ったものが、次に師匠へ向かっているのだとしたら。

胸の奥へ冷たいものが差し込んだ、その時だった。

喉元が、微かに熱を帯びる。

「……っ」

私は反射的に、指先を喉へ添えた。

胸の奥で、寄生型イノセンス――『ニルヴァーナ』が小さく脈打っている。
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