第30章 【第二十六話】灯籠の湖
その時。
机の下で、指先へ微かな熱が触れた。
ラビだった。
ほんの一瞬、確かめるみたいに私の手へ触れる。
顔を向けると、翠の瞳が静かに私を見ていた。
「……ティファ」
低い声。
「何か感じたら、ちゃんとオレらに言えよ」
責める声ではなかった。
けれど、曖昧に笑って済ませることを許さない響きだった。
私は一瞬だけ息を止める。
それから、小さく頷いた。
「……ええ。必ず」
ラビは数秒、私を見つめていた。
やがて、ほんの少しだけ息を吐く。
触れていた指先が、静かに離れていった。
窓の外では、朝から降り続いていた雪が、白く教団の石壁を覆い始めていた。