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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第30章 【第二十六話】灯籠の湖


長い沈黙のあと、ラビが小さく笑う。

「別に。ティファが誰を気に掛けるかは、ティファの自由さ」

神田は答えない。

「でも、オレも何も気付かねぇふりしてられるほど、出来た男じゃねぇんだよ」

牽制。

警告。

それから、譲るつもりのない意思。

神田は、わずかに目を細めた。

以前なら、くだらないと吐き捨てて終わっていた。

けれど今は、その言葉を笑い飛ばせなかった。

「……知るか」

低く返す。

神田は一瞬だけ、ティファへ視線を向けた。

彼女は、何も知らない顔でこちらを見ている。

その顔を見た瞬間、胸の奥に沈んでいたものが、はっきり形を持った。

それは蓮の花の記憶ではない。

白い部屋の奥に残る声でもない。

探さなければならない誰かを追い続ける衝動でもなかった。

目の前にいるこの女を。

今の自分が、勝手に目で追い、苛立ち、手放したくないと思った。

ただ、それだけだった。

だからこそ、余計に腹が立つ。

あの馬鹿ウサギを選んだことなど、最初から分かっている。

自分に、同じ目が向けられるはずもない。

それでも。

自分が勝手に目を逸らす理由にはならない。

「俺は、俺の好きにする」

静かな声だった。

ティファが、きょとんと目を瞬く。

「何の話?」

「お前は知らなくていい」

「またそれ?」

不満そうなティファを横目に、ラビがふっと息を吐いた。

「……そ。なら、オレも遠慮しねぇから」

「最初からしてねぇだろ」

「まぁな」

二人の視線が、静かにぶつかる。

ティファが小さく溜息を吐いた。
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