第29章 【幕間】月影の楽園 後日談 ―帰る場所
ぐい、と腕を引かれる。
次の瞬間、背中が柔らかなソファへ沈んだ。
「っ、ラビ……」
見上げた先。
ラビが、すぐ近くにいる。
片腕をソファへつき、逃がさないみたいに私を囲い込んでいた。
翡翠色の瞳が、熱っぽく細められている。
「……その顔」
低く掠れた声。
「そそられんな」
私は熱くなった頬を誤魔化すみたいに視線を逸らした。
けれど、ラビの指がそっと顎へ触れ、ゆっくりこちらを向かせる。
「逃げんなよ」
囁くみたいな声だった。
胸が、どくりと鳴る。
ラビはそのまま、軽く唇を重ねた。
触れるだけのキス。
柔らかく、優しい。
離れたと思った瞬間、また触れる。
今度は少し長く。
何度も、何度も。
確かめるみたいに繰り返される口付けに、呼吸がじわじわ乱されていく。
「……ん」
小さく漏れた息に、ラビが微かに笑った。
「やば……」
低い声。
けれど次のキスは、また甘かった。
唇を食むみたいに触れ、軽く啄んでから離れる。
焦らされているみたいで、落ち着かない。
私は無意識に、ラビの服をきゅっと掴んでいた。
その瞬間。
ラビの瞳が、僅かに揺れる。
「……ティファ」
掠れた声。
そのまま額が触れ合う距離まで近付く。
熱い呼吸が混ざる。
「これ以上したら、止まんない」
そう言うくせに。
ラビはまた、唇を重ねてきた。
今度は深く。
角度を変えながら、離さないみたいに口付けられる。
私は小さく息を呑む。