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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


私は彼の隣へ腰を下ろす。

黒い袖を慎重に捲ると、赤黒い傷口が露わになった。

私は布へ消毒液を含ませ、そっと傷口へ当てる。

そして白い布を、彼の腕へ重ねていった。

けれど、包帯を巻く途中で、私は思わず手を止めた。

傷口の端が、ゆっくりと塞がり始めていた。

血の滲む赤黒い裂け目が、まるで内側から押し戻されるように、少しずつ形を変えていく。

普通なら、何日も熱を持ち、疼き続けるはずの傷。

それが、目の前で、静かに閉じようとしていた。

「……本当に、塞がるのね」

思わず零れた声は、自分でも驚くほど小さかった。

その瞬間、神田の腕が僅かに強張る。

「……気味悪くねぇのか」

低い声。

私は顔を上げた。

「何が?」

「この傷だ」

神田は窓の外へ視線を向けたまま、淡々と言う。

「普通じゃねぇ速さで塞がる。見ただろ」

わざと突き放すような声だった。

私は包帯の端を留め、小さく息を吐く。

「見たわ」

「なら――」

「生きるための力でしょう」

神田の言葉が止まる。

私は包帯を巻き終えた腕から、ゆっくり手を離した。

「それに、早く治るからって、痛くないわけじゃない」

神田は何も言わなかった。

蒼い瞳が、包帯の巻かれた腕へ落ちている。

私は小さく笑う。

「終わったわ」

立ち上がろうとした、その時。

「……お前は」

低い声が落ちた。

私は振り返る。

神田はまだ腕を見たままだった。

「……本当に、変わらねぇな」

それだけだった。

けれど、胸の奥が小さく揺れた。

「変わってほしかったの?」

尋ねると、神田はすぐに顔を顰める。

「馬鹿言ってんじゃねぇ」

「そう」

私は少しだけ笑い、元の席へ戻った。

窓の外では、朝焼けが砂漠を淡く照らし始めていた。
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