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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


次の瞬間。

サフィアの身体へ亀裂が走る。

黒い肉体が、ゆっくりと崩れ始めた。

ヴェールが裂け落ちる。

長い黒髪が、水面へ広がる。

露わになった右頬には、深い傷跡が残っていた。

けれど、その顔は今までよりずっと人間らしく見えた。

悲しそうな目。

泣き疲れたみたいな表情。

サフィアは崩れながら、静かに神田を見上げる。

『……あなたも』

掠れた声。

『苦しかったのね』

神田は何も答えなかった。

ただ、六幻を握ったまま、彼女を見下ろしている。

サフィアの瞳が、ゆっくり私へ向く。

『置いていかれたくなかっただけなのに』

静かな声。

『どうして、誰かを傷付けるものになってしまうのかしら』

喉の奥で、『ニルヴァーナ』が優しく脈打った。

悲しい。

けれど、哀れみだけで終わらせてはいけない。

その姿をしたAKUMAは、多くの人を死へ誘った。

それでも、始まりにあった願いまで否定したくはなかった。

私はゆっくりと近付いた。

崩れていくサフィアの姿をしたAKUMA。

その奥で、かすかに震えている魂へ向けて、小さく口を開く。

「……あなたは、彼女を苦しめるために戻ってきたわけじゃない」

黒い涙が、傷のある頬を伝う。

それはサフィアの顔だった。

けれど、泣いているのは彼女ではない。

彼女の声に呼び戻され、彼女を殺すことになってしまった魂だった。
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