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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


「……殺す」

神田の声は低かった。

けれど、そこにあるのは怒りだけではない。

息を押し殺すような苦しさが、その声の奥へ滲んでいた。

このままでは駄目だ。

サフィアは、神田の傷へ入り込み、そこから心ごと引きずり込もうとしている。

その時。

サフィアが、ゆっくり両手を広げた。

『ねぇ、ユウ』

周囲の闇へ、無数の人影が浮かび上がる。

『置いていくくらいなら』

『置いていかれるくらいなら』

『一緒に終わればいいの』

声が幾重にも重なる。

その中心へ、黒い髪の子の幻が再び現れた。

今度は、泣いていなかった。

ただ、寂しそうに神田を見つめている。

『ユウ』

その声は、今までの怨嗟とは違っていた。

優しい。

あまりにも優しく、神田を呼んだ。

だからこそ。

神田の呼吸が、大きく揺れた。

『一緒に来て』

地下水路が、静まり返る。

神田の手から、僅かに力が抜ける。

六幻の切先が、ゆっくり下がった。

蒼い瞳から、殺気が薄れていく。

まるで、本当にその手を取ろうとするみたいに、神田が一歩前へ踏み出した。

「――駄目!」

私は咄嗟に、その背中へ手を伸ばした。

黒い団服を掴む。

神田の身体が、びくりと止まった。

「行かないで……!」

震える声が、地下水路へ響く。

「勝手に、終わろうとしないで」

自分でも驚くほど、声が切実になった。

「あなたが何を見たのか、私には分からない。何を抱えてきたのかも、全部は知らない」
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