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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


その影達は、皆、誰かを呼んでいた。

夫を。
妻を。
子を。
恋人を。

まだ生きているはずの誰かを、あるいは二度と届かない誰かを。

『行かないで』

『置いていかないで』

『一緒に来て』

幾重にも重なる声が、水路の闇へ滲んでいく。

そして、その中に一人だけ。

黒い髪の子がいた。

私は呼吸を止める。

先程、神田へ触れた時に見えた姿。

水面の向こうに立つその子は、泣き出しそうな顔で神田を見ていた。

『ユウ』

その声が落ちた瞬間、神田の呼吸が止まる。

「神田!」

呼び掛ける。

けれど、神田は動かなかった。

六幻を握る手だけが、微かに強張っている。

サフィアは嬉しそうに目を細めた。

『可哀想』

鈴の音が、静かに響く。

『あなたも、置いていったのね』

神田の眉間へ深い皺が刻まれる。

『大切だったのでしょう?』

『それなのに、一人で生きているのね』

黒い髪の子の幻が、ゆっくり神田へ手を伸ばす。

『ユウ』

震える声。

『どうして、ひとりにしたの』

その瞬間。

神田の中で、何かが切れた。

「黙れぇッ!!」

轟音。

六幻が一気に振り抜かれる。

凄まじい斬撃が地下水路を裂いた。

石壁が砕け、黒い水が大きく跳ね上がる。

サフィアの身体が、斜めに裂け飛んだ。

けれど。

彼女は笑っていた。

裂けた身体が黒い靄に包まれ、ゆっくり元の姿へ戻っていく。

『やっぱり』

ヴェールの奥の口元が、愉しそうに歪む。

『あなたは、まだ自分を許していないのね』
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