• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


「神田」

静かに呼ぶ。

返事はない。

そこへ遅れて到着したナジームが、灰の残る床を見て息を呑んだ。

「……間に合いませんでしたか」

私は小さく首を横へ振る。

ナジームは唇を噛み、やがて慎重に神田へ視線を向けた。

「先程の女……明らかに神田さんを狙っています」

神田の空気が、ぴたりと冷えた。

「何が言いてぇ」

「これまでの証言を見る限り、被害者は大切な者の姿や声を見せられていたようです。ですが、神田さんへの干渉は……もっと個人的に見えます」

「個人的?」

「大切な者を見せるだけではなく、その人が一番触れられたくない記憶を抉っているように見えます」

神田の目が、冷たく細められた。

「……黙れ」

鋭い声だった。

ナジームはそれ以上、言葉を続けなかった。

沈黙が落ちる。

私は小さく神田を見る。

彼は何も言わない。

けれど、六幻の柄を握る指だけが、白くなるほど強張っていた。

ナジームが、今度は私へ視線を向ける。

「ティファさん。先程、何か見えたんですか」

白い部屋。
拘束具。
血。
黒い髪の少年。

断片的な光景が、まだ頭の奥へ焼き付いている。

けれど、私はすぐには答えられなかった。

それを口にすることは、神田が隠している傷を、他人の前へ晒すことになる。

「……」

答えを迷った、その時。

「余計な詮索すんな」

神田が低く口を開いた。

掠れた声だった。

ナジームは一瞬だけ言葉を詰まらせる。

けれど、すぐに小さく頭を下げた。

「失礼しました」
/ 972ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp