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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


「……神田」

返事はない。

――どうして、残していったの。

女の声。

悲しみだけではない。

執着。
渇望。
孤独。

そのすべてが、冷たい刃みたいに神田へ突き刺さっていく。

神田が一歩前へ踏み出した。

私は咄嗟に、その腕を掴む。

「待って」

「離せ」

低い声。

けれど、いつもよりずっと不安定だった。

「駄目」

神田が苛立ったように舌打ちする。

その腕へ力が入る。

けれど、私の手を振り払うより先に、歌声がふっと止んだ。

静寂。

冷たい夜風だけが、路地裏を吹き抜ける。

「……おい」

神田の声が落ちる。

彼の視線の先。

石畳の隅へ、赤い布切れが落ちていた。

私は慎重にそれを拾い上げる。

柔らかな布。

微かに残る、甘い香水の匂い。

そして、布の内側へ滲んだ黒い染み。

触れた瞬間、喉の奥で『ニルヴァーナ』が強く拒絶するように脈打った。

「……AKUMAの気配」

私の声に、神田の目付きが険しくなる。

「かなり濃いわ。さっきの女は、間違いなくAKUMAよ」

「最初から分かってたことだ」

神田はぶっきらぼうに吐き捨てる。

「でも、普通のAKUMAとは少し違う」

「何がだ」

「感情の残り方が、濃過ぎるの」

悲しみ。
孤独。
置いていかれた痛み。

そして、誰かを置いていくことへの恐怖。

それがAKUMAの殺意と混ざり合い、未だに布へこびり付いている。
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