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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編


しゃらり、と。

鈴の音が響いた。

その瞬間、喉の奥で『ニルヴァーナ』が強く脈打つ。

そして。

舞台中央へ、一人の女が現れた。

長い黒髪。

褐色の肌。

顔の右半分を隠す、赤いヴェール。

酒場の熱狂が、一瞬で爆発する。

男達が声を上げ、卓を叩き、踊り子達まで息を呑んで舞台を見つめている。

けれど。

私は、呼吸を忘れた。

その女から漂う気配は、普通ではなかった。

ぞわり、と肌が粟立つ。

冷たい。

なのに、酷く哀しい。

悲しみ。

孤独。

それらが、濃い執着のように絡み付いている。

「……変」

無意識に零れた声に、神田が小さく眉を寄せた。

「何がだ」

「分からない」

私は舞台から視線を逸らせないまま、小さく首を振る。

「でも、嫌な感じがする」

その瞬間。

舞台上の女が、ゆっくりこちらを見た。

赤いヴェールの奥。

見えている片方の瞳が、異様なほど暗い。

まるで、底がない。

女の口元が、ゆっくり笑う。

ぞわり、と背筋が粟立った。

次の瞬間。

――ユウ。

声が、聞こえた。

女とも、夢ともつかない声。

ひどく遠いのに、耳元で囁かれたみたいに近かった。

私は弾かれたように神田を見る。

神田の指先が、ぴくりと止まっていた。

蒼い瞳が、舞台上の女を睨み付けている。

けれど、その顔からは、いつもの怒気とは違う色が僅かに滲んでいた。
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