第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編
「……あの馬鹿ウサギは任務か」
不意に神田が言った。
私は驚いて顔を上げる。
「ええ。昨日から地方へ行ってるわ」
「そうか」
短い返事。
それだけだった。
けれど、神田の張り詰めていたような横顔が、ほんの僅かに緩んだように見えた。
きっと、ラビの騒がしさに巻き込まれずに済むと思ったのだろう。
私はそう納得し、深く考えなかった。
やがて、小舟の乗組員が静かに声を上げる。
「出航します」
白い蒸気が噴き出した。
私は外套の裾を押さえながら、小舟へ足を踏み入れる。
神田も無言のまま、その後へ続いた。