第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編
「それから、ティファちゃん」
「?」
「君の力で、あまり深く潜り過ぎないように」
その瞬間、喉の奥が僅かに熱を帯びた。
私は小さく眉を寄せる。
「現地の被害者には、“死んだ人間の声を聞いた”という証言もある。魂や記憶へ干渉する類の可能性もあるんだ」
コムイさんは資料へ視線を落としたまま、慎重に言葉を選ぶ。
「君の力は、そういうものと相性が良過ぎる。助けようとして、逆に引き込まれる危険もある」
室内の空気が、僅かに張り詰めた。
「……余計厄介だろ」
低い声が落ちる。
神田だった。
私は思わずそちらを見る。
神田は不機嫌そうに眉を寄せたまま、コムイさんを睨んでいる。
「コイツ、そういうのに触れやすい。変に深入りしたら、引っ張られるぞ」
静かな声。
けれど、その響きは思っていたよりずっと真剣だった。
私は小さく目を瞬かせる。
神田は腕を組んだまま、低く舌打ちした。
「普通の幻覚で済む気がしねぇ」
数秒の沈黙。
やがてコムイさんが、小さく息を吐いた。
「だから、神田くんを付ける」
神田の眉間へ、さらに深い皺が寄る。
「……気に食わねぇな」
「気に入る任務なんて、滅多にないだろう?」
「うるせぇ」
コムイさんは困ったように笑い、机の端から封筒を差し出した。