第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編
資料が一枚捲られる。
酒場の舞台中央で、無数の視線を浴びながら踊るサフィアの姿。
写真越しでも、目を奪われるほど美しい女性だった。
「数ヶ月前に突然姿を消したが、最近になって再び目撃情報が出始めている」
「……本人なの?」
私が問うと、コムイさんは静かに首を振った。
「まだ断定は出来ない。そこも含めて調べてほしい」
室内へ、紙を捲る音だけが響く。
「それと、現地へ入っていたファインダーが一人、消息不明になっている」
コムイさんが、一枚の紙を抜き取った。
乱れた筆跡。
紙の端は、何かに濡れて乾いたように歪んでいる。
そこには短く、こう書かれていた。
『歌が聞こえる』
『路地裏に女がいる』
『傷のある踊り子が――』
文章は、そこで途切れていた。
私は無意識に喉元へ触れる。
『ニルヴァーナ』が、ざわりと震えた。
嫌な感じだった。
まるで、まだ終われない何かが、遠くからこちらを見ているみたいに。
「……で?」
神田が不機嫌そうに口を開く。
「結局、やることは失踪者探しとAKUMA討伐だろ」
「基本はね」
コムイさんは頷く。
「ただ、歓楽街は人が多い。下手に暴れれば被害が広がる可能性がある。二人には、まずは現地へ入り、情報収集を優先してもらう」
「チッ」
神田が露骨に顔をしかめる。
私は思わず小さく苦笑した。
すると、コムイさんが再び私へ視線を向ける。