第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編
Side:ティファ
数日後。
任務報告書を提出した直後、私はコムイ室長から呼び出しを受けた。
執務室へ入ると、そこには既に神田の姿がある。
壁へ背を預けたまま、いつも通り露骨に不機嫌そうな顔をしていた。
けれど、左腕へ視線を向けると、先日血が滲んでいた場所はもう綺麗に塞がっているようだった。
団服の袖口から覗く肌に、包帯はない。
けれど、だからといって痛くなかったわけではないはずだ。
そう思うと、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなった。
「……何でお前もいる」
開口一番、それだった。
私は思わず小さく息を吐く。
「私に聞かれても困るわ」
すると、机の向こうでコムイさんが書類の山から顔を出した。
「はいはい、喧嘩しない」
軽い声。
けれど、そのまま一枚の資料を机へ広げる仕草には、いつものふざけた調子がなかった。
「今回の任務、君達二人で行ってもらうよ」
神田の眉間へ、即座に皺が寄る。
「……何でまたコイツとなんだ」
「えぇ?」
コムイさんがわざとらしく目を丸くした。
「だって、パリの任務報告を見る限り、君達の連携は悪くなかったからね」
「……偶然だろ」
「そういうことにしておこうか」
コムイさんは苦笑したあと、すぐに表情を引き締めた。
「それに今回は、ティファちゃんの能力へ干渉が起こる可能性がある。もし何かあった時、即座に止められる戦力が必要だ」