• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編


神田は何も言えなかった。

言葉が返らないことに、余計に腹が立つ。

こいつは、何故そこを見る。

何故、治るなら問題ないと終わらせない。

何故、ただの人間へ触れるみたいに、こんな傷を気に掛ける。

「……お前、暇なのか」

ようやく吐き捨てるように言うと、ティファは少しだけ目を細めた。

「心配してるのよ」

あまりにも当たり前みたいに言われて、神田の胸の奥が僅かに軋んだ。

「余計なお世話だ」

「そうかもね」

ティファは否定しなかった。

ただ、丁寧に包帯を巻き終える。

その白い指先が離れた瞬間、神田は無意識に拳を握った。

「……ラビのところにでも行ってろ」

口から落ちた言葉は、思っていた以上に低かった。

ティファの手が止まる。

「何でラビ?」

「……お前ら、付き合ってんだろ」

吐き捨てるように言った瞬間、自分でも分かった。

これはただの苛立ちではない。

パリの執務室で、あの馬鹿ウサギが何の躊躇もなく告げた言葉。

――恋人がそんな格好で潜入するとか、普通に心配だろ。

ティファは否定しなかった。

むしろ、その声はラビへ向ける時だけ柔らかくなった。

分かっていた。

最初から、自分が入り込む余地などない。

それなのに。

「……ええ。付き合っているわ」

ティファが少しだけ困ったように笑った。

その言葉へ、胸の奥が鈍く痛む。
/ 1010ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp