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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編


「でも、ラビのところに行くことと、あなたを放っておくことは別よ」

神田は、動けなかった。

意味が分からない。

本当に、理解出来ない。

もう選んだ相手がいるのなら、そいつだけを見ていればいい。

わざわざ自分の傷へ気付く必要もない。

放っておけばいい。

そうされることには、慣れている。

それなのに。

ティファはまるで当然みたいに、自分まで見捨てないと言う。

「……勝手なこと言ってんじゃねぇ」

ようやく絞り出した声は、思ったより掠れていた。

ティファは小さく首を傾げる。

「勝手なのは自覚してるわ」

それから、窓際へ置いていた資料を抱え直す。

「でも、傷はちゃんと休ませて。医療班に見つかったら、私まで怒られそうだから」

「知るか」

「じゃあ、私は知られないように祈っておく」

冗談めかして小さく笑う。

その笑顔が、胸の奥へ妙に残った。

ティファは扉へ向かいかけ、ふと足を止める。

「神田」

「何だ」

「この前は、ありがとう」

「……何の話だ」

「パリで、守ってくれたこと」

神田の眉が動く。

あの路地裏で、弾丸から彼女を引き寄せた瞬間。

考えたわけではなかった。

身体が勝手に動いた。

今でも、その理由を認めるつもりなどなかった。

けれど、ティファは静かに微笑んだ。

「神田がいてくれて、助かったわ」

それだけ告げると、今度こそ彼女は廊下の向こうへ去っていく。

銀髪が角を曲がり、見えなくなる。
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