第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編
その時だった。
路地裏の闇が、不自然に揺らぐ。
金属が擦れるような、嫌な音。
喉の奥で、『ニルヴァーナ』が鋭く脈打った。
「――っ!」
建物の隙間から、黒い弾丸が放たれる。
トマが息を呑む。
「残存していたAKUMA――!」
避けるより早く、強い腕が私の身体を引いた。
視界が大きく反転する。
次の瞬間、私は硬い胸元へ抱き込まれていた。
鼻腔を掠める硝煙の匂い。
冷えた夜気。
そして、すぐ近くにある神田の体温。
「神――」
言葉を発するより早く、銀の軌跡が闇を裂いた。
神田は私を片腕で引き寄せたまま、六幻を抜いていた。
飛来した弾丸が、私のすぐ横で真っ二つに斬り払われる。
轟音。
間髪入れず、神田の身体が前へ出た。
その際、私を壁際へ逃がすように押し退ける。
「下がってろ」
低い声。
次の瞬間。
六幻が夜気を斬り裂いた。
建物の隙間へ潜んでいたAKUMAが、姿を晒す暇もなく核を貫かれる。
断末魔。
黒い身体が崩れ、塵となって冷たい石畳へ散っていった。
静寂。
私は神田の背中を見つめたまま、息を吐く。
「……神田」
呼ぶと、彼は六幻を収めながらこちらを振り返った。
その顔は、ひどく不機嫌だった。
「怪我は」
「ないわ」
そう答えたあと、私は少しだけ首を傾げる。