第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編
やがて、AKUMAの身体が崩れ落ち、細かな塵となって舞台へ散っていく。
静寂。
観客達が、まるで長い夢から醒めたみたいにざわめき始めた。
「何が……?」
「今のは……舞台では……」
「私、どうして……」
混乱した声。
泣き崩れる者。
隣の人へ縋り付く者。
私は荒い息を吐いた。
歌を止めた途端、身体から力が抜けそうになる。
その瞬間だった。
「素晴らしい……!」
背後から、熱に浮かされたような声が響いた。
振り返る。
支配人が、舞台へ上がって来ていた。
その顔には、恐怖も焦りもない。
むしろ、壊れた舞台を前に、恍惚とした笑みを浮かべている。
「君は、悲劇を壊したのではない!」
男は両手を広げる。
「新しい悲劇を生んだのだ! 死者へ誘われる者達が生へ引き戻され、再び絶望へ落ちる! なんと美しい……!」
その声に、胸の奥へ冷たい怒りが広がった。
「死に誘われる者の顔は美しい! 残された者が狂い、蘇りを願う姿はさらに美しい! その願いが、また次の悲劇を呼ぶ。これほど上質な“餌”が他にあるかね!?」
男が、血の滲んだ私の腕へ手を伸ばす。
「君も、もっと近くで見たくはないか? 人が愛ゆえに壊れていく瞬間を――」
触れられる。
そう思った次の瞬間。
――一閃。
轟音。
支配人の足元の舞台床が、深く抉れた。