• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編


幕間。

劇場を満たしていたざわめきが、ゆっくり静まっていく。

赤い幕が開き、眩い光が舞台中央へ落ちた。

私は一人、その光の中へ歩み出る。

深紅のドレスの裾が、舞台床を静かに滑った。

観客席から、小さなどよめきが上がる。

誰だ。
新しい歌姫か。

そんな囁きが、幾重にも重なっていく。

私は舞台中央で足を止めた。

視線を伏せる。

喉の奥で、『ニルヴァーナ』が低く脈打つ。

そして。

歌が、静かに零れた。

最初の一音が、空間へ落ちる。

その瞬間。

劇場を満たしていた熱が、僅かに揺らいだ。

ざわめきが止まる。

観客達が、息を呑む。

私の声が、劇場の隅々へ染み渡っていく。

けれど同時に。

喉の奥へ、黒い糸が絡み付くような感覚が走った。

――いる。

この舞台の奥に。

歌へ引き寄せられるように、何かが蠢いている。

舞台中央へ、黒い棺がゆっくり運び込まれてきた。

観客達が歓声を上げる。

演目の再開だと思っているのだろう。

支配人は特等席から、陶酔した笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。

まるで、私の歌が舞台へどんな狂気を加えるのか、楽しみにしているみたいに。

棺が、軋む音を立てる。

私は歌を止めない。

けれど、指先へ僅かに力が籠もった。
/ 794ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp