第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
数時間後。
私は長い銀髪を結い直しながら、教団の門前へ立っていた。
冬の冷たい風が、団服の裾を揺らしていく。
隣には神田。
少し離れた場所では、トマが静かな手付きで荷物と資料を確認していた。
「劇場周辺の地図と、関係者の簡易情報です」
トマが書類を差し出す。
「支配人はかなり用心深い人物らしいので、正面からの接触は避けた方がいいでしょう。現地の協力者を通して、舞台へ上がる機会を作ります」
「現地の協力者?」
「以前、劇場へ衣装を卸していた仕立屋です。劇場側に不審感を抱いており、ファインダーへ情報を渡してくれました。歌い手としての紹介状も、彼女から用意してもらっています」
なるほど。
それなら、突然現れた歌姫志望として近付くよりは自然だ。
私は書類を受け取り、小さく頷く。
「分かったわ」
「俺は裏で動きます。支援者の名簿と、舞台後に亡くなった観客達の繋がりを探ります。現地のファインダーとも合流し、万一の際は観客の避難と支配人の拘束に回ります。お二人は表側の潜入と護衛に集中してください」
無駄のない声音。
神田は短く鼻を鳴らす。
「足引っ張んなよ」
「承知しています」
トマは淡々と返した。
その落ち着いた態度に、私は少しだけ安心する。