第25章 【第二十四話】終幕なき夜・前編
「よかったよかった。君達なら連携面は問題ないからね。トマには裏方として動いてもらう。劇場関係者の名簿、支援者の情報、観客の避難経路の確認。それから現地のファインダー達と合流して、非常時の確保と誘導を頼むよ」
「承知しました」
トマが静かに頷いた。
「それと、潜入には相応の衣装が必要になる」
コムイさんはそう言いながら、机の下から細長い箱を取り出した。
嫌な予感がした。
差し出された箱を開ける。
そこに収められていたのは、深紅のシルクドレスだった。
滑らかな生地が、窓からの光を妖しく反射している。
喉元は、黒い刺繍の入った細いハイネックで覆われている。
けれど、そこから胸元へ向かって雫型に肌を覗かせる意匠になっており、腰の線へ沿う柔らかな布が、舞台へ立つ歌姫らしい華やかさを作っていた。
私は小さく目を見開く。
「……派手ね」
「潜入には必要だからねぇ」
コムイさんが、少し気まずそうに笑う。
神田の視線が、一瞬だけ箱の中へ落ちた。
次の瞬間、露骨に顔をしかめる。
「趣味悪ぃな」
「僕の趣味じゃないよ!?」
コムイさんが慌てて両手を振った、その時だった。
こんこん、と扉が鳴る。
返事をするより先に、扉が僅かに開いた。
「ティファ、いる? リナリーが薬の替え持ってけって――」
聞き慣れた声。
どくん、と胸が反射的に跳ねる。