第24章 【第二十三話】恋人になった朝、揺れる剣
「分かったわ」
「本当に分かってんだろうな」
「しつこい」
「お前が信用ねぇからだろ」
言葉は乱暴なのに、彼の視線は一度だけ私の右肩へ落ちた。
私は少しだけ笑う。
そういうところは、相変わらずだった。
次の瞬間。
神田が床を蹴る。
鋭い踏み込み。
ガンッ、と重い音が鍛錬場へ響いた。
私は咄嗟に左手の木剣を滑らせ、その一撃を受け流す。
速い。
けれど、迷いがない。
神田の剣筋は、いつだって真っ直ぐだった。
余計な駆け引きも、遠慮もない。
だからこそ、戦いやすい。
一歩引き、足を入れ替える。
神田の木刀が再び迫る。
私は半身になって躱し、そのまま懐へ入り込もうとした。
「甘ぇ」
低い声。
次の瞬間、足を払われる。
「っ……!」
視界が反転した。
咄嗟に右肩を庇いながら床へ転がろうとした私の腕を、神田の手が素早く掴んだ。
落下の勢いが殺される。
床へ背が触れた時には、右肩へ響くほどの衝撃はなかった。
そのまま、木刀の切っ先が喉元へ突き付けられる。
静寂。
互いの息遣いだけが、近くに響いた。
「……隙だらけだ」
低い声。
私は喉元の木刀を見上げ、小さく息を吐く。
「今のは神田が意地悪」
「実戦で敵に同じこと言う気か」
「言わないわよ」
「なら黙って反省しろ」
即答だった。
私は床へ寝転がったまま、思わず小さく笑う。
神田の眉間へ皺が寄った。
「……何笑ってる」
「別に」
「気色悪ぃ」
「失礼ね」
神田は舌打ちしながら木刀を引いた。