第24章 【第二十三話】恋人になった朝、揺れる剣
食堂を出たあとも、指先にはまだラビの熱が残っていた。
触れられたことも。
触れ返した時、あんなふうに嬉しそうな顔をされたことも。
思い出すだけで、胸の奥が甘く騒ぐ。
私は熱くなりそうな頬を誤魔化すように、小さく息を吐きながら回廊を歩いた。
その先で、見覚えのある白い背中が足を止めていた。
窓の外を見ているアレンだった。
こちらに気付いたのか、彼はゆっくり振り返る。
銀灰色の瞳が、私を映した。
「……ティファ」
いつも通りの声。
けれど、その笑みは少しだけ明るすぎた。
「朝食、終わったんですね」
「……ええ」
アレンの視線が、一瞬だけ私の手元へ落ちる。
さっきまでラビと繋いでいた指先。
何も残っていないはずなのに、見透かされたような気がして、私は思わず手を握った。
アレンはそれに気付いたように、少しだけ目を伏せた。
けれどすぐに、いつもの穏やかな笑みへ戻る。
「ラビと、一緒だったんですか」
責める響きはなかった。
ただ、答えを知っている人の声だった。
それが、余計に苦しかった。
私は小さく頷く。
「……ええ」
アレンは小さく息を吐いた。
ほんの僅か、唇に乗せた笑みが揺れる。
けれど、その奥に隠された痛みを、私は見なかったことには出来なかった。