第24章 【第二十三話】恋人になった朝、揺れる剣
けれど。
ラビが当然みたいに、自分の隣の椅子を引いた。
「ここ」
「……っ」
近くには科学班もいる。
リナリーもいる。
クロウリーだっている。
なのに、ラビは平然としていた。
まるで、最初から私が隣へ座ることに決まっていたみたいに。
私は一瞬だけ迷ったあと、諦めるようにその椅子へ腰を下ろした。
隣から、ラビの体温が近付く。
それだけで落ち着かない。
私は誤魔化すように、テーブルの上の紅茶へ手を伸ばした。
その瞬間。
机の下で、指先がそっと触れた。
「っ……」
びくり、と肩が跳ねる。
ラビは何事もない顔でコーヒーへ口を付けている。
けれど机の下では、彼の指先が私の手の甲へ触れたままだった。
確かめるみたいに、そっと小指が絡む。
私は慌てて隣を見た。
「……ラビ」
小声で呼ぶ。
「ん?」
あまりにも平然とした声だった。
「皆、いるんだけど……」
するとラビは、カップで口元を隠すようにしながら、喉の奥で笑った。
「知ってる」
「知ってるって……」
「だから静かにしとけって。バレるぜ?」
「誰のせいよ……!」
必死に小声で抗議する。
けれど、ラビは肩を揺らして笑うだけだった。
そのくせ、机の下で絡めた指は離さない。
むしろ、落ち着かせるみたいに、親指が私の指の背をそっと撫でた。
からかわれているはずなのに。
その触れ方があまりにも優しくて、胸の奥がじんわり甘くなる。
私は、もう手を引くことが出来なかった。