第24章 【第二十三話】恋人になった朝、揺れる剣
朝の食堂は、いつも通り賑やかだった。
私は入口で一度足を止め、それから配膳口へ向かった。
焼き立てのパンと温かなスープ。
湯気の立つ紅茶を受け取り、盆を両手で持つ。
いつもと同じ朝食。
いつもと同じ教団の日常。
なのに、今日はそれだけで妙に落ち着かなかった。
盆を持ったまま席を探していた、その時。
「あ」
視線がぶつかった。
窓際の席。
コーヒーの入ったカップを片手に座っていたラビが、ぴたりと動きを止める。
数秒の沈黙。
それから、片方だけ覗く翠の瞳が、ゆっくりと細められた。
その表情だけで分かった。
昨夜までのように、もう隠すつもりなどないのだ。
私が彼を選んだことを、嬉しくて仕方がないみたいに、その瞳が熱を帯びている。
どくん、と胸が跳ねた。
私は思わず立ち止まる。
ラビはそんな私を見て、喉の奥で小さく笑った。
「……おはよ、ティファ」
低い声。
昨日までと同じ挨拶のはずなのに、響きがまるで違う。
甘くて、優しくて、それだけで昨夜の口付けを思い出してしまう。
「……お、おはよう」
どうにか返した声は、自分でも分かるくらいぎこちなかった。
ラビの口元が、楽しそうに緩む。
私は顔が熱くなるのを感じながら、逃げるようにリナリーの隣――ラビの斜め向かいの席へ向かおうとした。