• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


「嫌……お母さん、嫌……! 今、誰か呼ぶから……!」

立ち上がろうとした私の手を、母が弱々しく掴んだ。

「……駄目……聞いて……」

「でも……!」

「ティファ……」

声は弱い。

それでも、拒めないほど強い響きがあった。

涙で滲む視界の向こうで、母は必死に私を見ていた。

「……クロス・マリアンを……探しなさい」

「……クロス……?」

知らない名前だった。

聞いたこともない。

けれど、母の瞳は真剣だった。

「その人なら……あなたを……守ってくれる……」

「そんなの……お母さんも一緒に行けばいいじゃない……!」

声が震える。

「一緒に探せばいいでしょう……? だから、立って……お願い……」

母は、ほんの僅かに微笑んだ。

その表情が、ひどく怖かった。

まるで、もう自分が一緒に行けないことを知っているみたいだったから。

その時。

母の傷口の周りに、黒い斑点が浮かび上がった。

星のような形をした、禍々しい痣。

それは瞬く間に母の胸元から首筋へ、腕へと広がっていく。

「……なに……?」

母の指先が、黒く染まる。

次の瞬間。

さらり、と。

指の先が、灰のように崩れた。

「……え……?」

私の呼吸が止まる。

雪の上へ、黒い灰が零れ落ちる。

「いや……なに、これ……お母さん……!」

私は崩れ始めた母の手を両手で包み込んだ。

けれど、握り締めたはずの指は、触れた端から脆くほどけていく。

「嫌……嫌……! 消えないで……!」

「……ティファ……」

母は苦しそうに息を吸い、それでも残った力で手を伸ばした。

崩れかけた指先が、私の喉元へ触れる。

「あなたは……生きて……」

「お母さん……!」

「……最後の……セトラの子、だから……」

「……セトラ……?」
/ 522ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp