第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
見抜かれている。
私は誤魔化すようにグラスを持ち上げた。
「……何のことか分からないわ」
「はいはい」
ラビは小さく笑う。
「無茶すんなよ。少しでも痛んだら終わりだからな」
「分かってるわ」
そう答えて、酒を煽った。
けれど、本当は。
肩の痛みより、ラビに見透かされていることの方が、ずっと苦しかった。
コムイさんが楽しそうに新しい酒瓶を持ってくる。
「よーし、今日は無礼講だ!!」
「室長が一番楽しそう!!」
笑い声の中。
私は、またグラスへ手を伸ばす。
その時、ふとラビと目が合った。
翠の瞳が、じっと私を見ている。
「……まだ大丈夫か?」
低い声。
「平気よ」
「なら、一杯だけ追加」
ラビはそう言って、自分のグラスへも同じ量だけ酒を注いだ。
さっきまでの軽口とは違う。
本当に、私を見ている。
そのことが余計に落ち着かなくて、私は再び酒を口へ運んだ。
「逃げるみたいに飲むなって」
ラビが小さく笑う。
「逃げてないわよ……」
「いや、逃げてるさ」
図星だった。
私は視線を逸らしながら、またグラスへ口を付ける。
「ティファ、本当に強いなぁ……」
科学班が感心したように呟く。
既に数人は頬を真っ赤にして潰れかけているのに、私はまだ普通に座っていた。
すると。
「前はもっと強かったのよ」
私は、少しぼんやりした声で言った。
「師匠が飲み代払えなくて、店主さんに追い掛け回された時とか、酔ったまま逃げてたし」
「何その地獄みたいな生活」
ラビが吹き出す。