第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
私は肩を竦めた。
「あと、師匠が女の人に刺されそうになった時、止めたり」
「とんでもねぇな、クロス元帥!?」
食堂がまた笑いに包まれる。
アレンは静かに頭を抱えていた。
「……師匠、本当にティファへ余計なことばかり教えてますね」
「でも、生きるのに必要だったから」
私は、けらけら笑う。
だが、その瞬間。
ラビがじっとこちらを見ていることに気付いた。
「……なによ」
「いや」
頬杖をついたまま、翠の瞳を細める。
「ティファって、思ってたより逞しいなって」
私は誤魔化すように視線を逸らした。
すると。
「でも」
今度は、アレンだった。
静かな声。
「ティファ、本当はそんな生活、向いてないですよ」
私は、ぴたりと止まる。
アレンは少し困ったように笑った。
「無理して強くなっただけです」
胸が小さく痛んだ。
その言葉は、優し過ぎてずるい。
私は何も返せなくなる。
すると、ラビがふっと笑った。
「まぁ、確かに」
ちらり、とこちらを見る。
「変なとこ世話焼きだし、酔っ払い相手でも放っとけなそう」
「……放っとけない人が多すぎるのよ」
私は小さく溜息を吐く。
「師匠も、アレンも、クロウリーも……」
そこで一瞬、言葉が止まった。
ラビが「へぇ?」と口角を上げる。
「オレは?」
少しだけ身を乗り出してくる。
私は、ぼんやりした頭のまま、小さく呟いた。
「……ラビも」
その瞬間。
ラビの表情が、ぴたりと止まった。
私は酒の勢いで気付かない。
けれど。
翠の瞳が、ゆっくり細められる。
「それ、かなり嬉しい」
低い声。