第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
「……絡まれてたのか?」
ラビの声が少し低くなった。
私は気付かず頷く。
「まぁ、銀髪は珍しいし。昔は今よりもっと隙があったから」
アレンの眉が寄る。
私は苦笑した。
「だから鍛えられたのよ。“潰れたふり”とか、“酔ってない顔”とか」
「何教えてんだ、あの元帥……」
リーバー班長が呆れたように呟く。
私は誤魔化すように、もう一杯グラスを手に取った。
けれど、その手首をラビの指が軽く止める。
「……お前、怪我してんだろ」
低い声。
思わず顔を上げると、ラビは笑っていなかった。
「飲み過ぎんなよ」
心配されている。
分かっている。
なのに、診療所で抱き寄せられた熱も、汽車で絡められた指も、医務室で触れられた髪も、全部思い出してしまって。
私は反射的に視線を逸らした。
「ラビよりは飲めるもの」
ラビが一瞬、目を瞬く。
「……へぇ?」
「怖いの?」
「言ったな?」
けれど、彼の指はグラスを止めたままだった。
「分かった。付き合ってやる」
「え?」
「ただし、オレが止めたら終わり。怪我人に好き勝手飲ませるほど、優しくねぇさ」
その言葉に、胸が跳ねた。
食堂が一気に沸く。
「飲み比べだー!!」
「始まった!!」
アレンだけが、頭を抱えていた。
「止める人まで参加してどうするんですか……」
「オレが見てねぇと、こいつ一人で逃げるみたいに飲むだろ」
どくん、と胸が鳴った。