第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
夜。
食堂へ向かう廊下の先から、既に賑やかな笑い声が聞こえていた。
扉を開けると、料理の香りと暖炉の熱が一気に押し寄せてくる。
クロウリーの歓迎会は、始まって早々に大騒ぎになっていた。
クロウリーは科学班に囲まれ、既に半泣きだった。
「こんなに歓迎されたのは初めてなのであるぅぅ……!」
「クロウリー、もっと食べてください!」
「酒も飲むさー!」
「吾輩、どれから手を付ければよいのであるかぁぁ!?」
騒がしい空気に、私も自然と頬が緩む。
……けれど。
胸の奥だけは、少しも静かになってくれなかった。
ラビに触れられた髪。
汽車の中で絡められた指。
アレンの真っ直ぐな言葉。
駄目だ。
このままでは、意識し過ぎてまともに話せない。
そんな私を見ていたのか。
「ティファちゃん」
コムイさんが、にこやかにグラスを差し出してきた。
琥珀色の酒が揺れている。
「今日はもう任務もないし、お酒でもどうだい?」
私は一瞬だけ迷った。
けれど。
離れた席から、ラビの視線を感じた瞬間。
勢いのまま、グラスを受け取っていた。
「……いただきます」
そのまま、一気に飲み干す。