第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
部屋へ戻ると、ようやく一人になれた。
扉を閉めた瞬間、私は小さく息を吐く。
静かな部屋。
見慣れた机。
窓の外では、群青色の空へ夜がゆっくり滲み始めている。
任務が終わったのだと、そこでようやく実感した。
包帯を濡らさないよう気を付けながら身体を清め、汚れた団服から着替える。
右肩を動かすたび、鈍い痛みが走った。
けれど、それよりも厄介だったのは、まだ耳元に残るラビの声だった。
――敏感。
――いい匂いする。
思い出した瞬間、顔が熱くなる。
「……もう」
私は髪を拭きながら、意味もなく小さく呟いた。
落ち着きたいのに、少しも落ち着かない。
包帯の白さを見るたび、ラビの視線を思い出してしまう。
優しくて。
少し強引で。
逃げ道を塞ぐみたいに、真っ直ぐで。
私は深く息を吐き、髪を結い直した。
今夜はクロウリーの歓迎会だ。
あまり変な顔は出来ない。
そう自分へ言い聞かせて、私は部屋を出た。