第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
迷いのない返事。
「ティファの話、ちゃんと聞くよ」
胸が少し軽くなる。
「ありがとう」
そう呟いた、その時。
「……あ、いた」
聞き慣れた低い声。
どくり、と胸が鳴った。
入口へ振り返ると、ラビが壁へ寄り掛かっていた。
視線が合う。
それだけで、あの朝から続く熱が一気に蘇る。
ラビは私を見るなり、ふっと表情を緩めた。
「クロちゃん、科学班に捕まって泣きそうになってる」
思わず吹き出す。
「もう?」
「もう」
ラビも小さく笑う。
その自然な笑顔に、胸の奥がまた落ち着かなくなった。
けれど次の瞬間。
ラビの視線が、私の肩の包帯へ止まる。
翠の瞳が、ほんの少しだけ細くなった。
「……ちゃんと診てもらった?」
「ええ」
「ならいい」
短く言って、ラビはそれ以上傷のことには触れなかった。
けれど、視線だけはまだ包帯の上に残っている。
それがかえって、落ち着かなかった。
すると、隣でリナリーがそっと口元を押さえた。
私とラビを見比べながら、小さく微笑む。
「……私、先に戻ってるね」
私は慌てて顔を上げた。
「え、リナリー?」
「歓迎会までまだ少し時間あるし、ティファも一度部屋で休んだ方がいいと思うから」
リナリーは柔らかく微笑む。
それから、ちらりとラビを見る。
「ラビ、ちゃんと部屋まで送ってあげてね」
「了解」
軽く返す声。
リナリーはくすりと笑い、医務室を出ていった。