第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
クロウリーの強張っていた呼吸が、少しずつほどけていく。
絶望の底へ沈み切っていた心が、ようやく悲しみに触れることを許されたみたいに。
どれくらい歌っていただろう。
やがて、泣き続けていたクロウリーの身体から、ゆっくり力が抜けた。
戦いと悲しみに耐え切れなくなったように、そのまま静かに床へ伏せる。
「……ティファ、もういい」
低い声が、背後から落ちた。
振り返ると、ラビが静かに立っていた。
翠の瞳には、いつもの軽さはない。
「クロちゃん、もう充分泣いたさ」
その隣には、アレンもいた。
銀白色の瞳で、静かにクロウリーを見つめている。
その眼差しには、深い悲しみと、痛みを知る者だけの沈黙が滲んでいた。
私はそっと歌を終える。
意識を失ったクロウリーの傍へ膝をつき、頬に残った涙を静かに拭った。
「……おやすみ、クロウリー」
立ち上がろうとした、その瞬間。
「っ……」
視界が揺れた。
右肩の裂傷から、思っていた以上に血が流れていたらしい。
膝から力が抜けかける。
だが、次の瞬間。
強い腕が、当然みたいに私の腰を支えた。
「おっと」
ラビだった。
「だから無茶すんなって」
低い声が、すぐ近くで響く。